最高裁判所第三小法廷 昭和44年(オ)507号 判決 1969年10月28日
上告人
小林敏郎
被上告人
劉福得
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由一について。
所論は違憲をいうも、具体的に事由を示していないから、適法の上告理由となりえない。論旨は採用の限りでない。
同二について。
所論の甲第一号証は、原審が請求原因および抗弁等の事実認定に供していない証拠であり、原審はその成立を認定してしていないものであることは、原判決により明らかである。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
同三について。
所論は、引渡命令に対して第三者異議の訴の提起できることを前提として判断遺脱をいうものであるので、引渡命令に対して第三者異議の訴を提起することが許されるかにつき、職権をもつて判断する。
本件の引渡命令は、競売法三二条二項によつて準用される民訴法六八七条によつて発せられたものであることは、記録上明らかであるところ、右引渡命令の性質は、債務名義ではなく、執行の方法にほかならない。したがつて、右引渡命令に対して不服を申し立てるには、先ず民訴法五四四条により異議を申し立て、その申立が却下された場合には、却下の裁判に対して同法五五八条によつて即時抗告を申し立てるべきである(大判大正一〇年九月一九日民録二七輯一五三七頁、大判昭和七年一〇月四日民集一一巻一八九七頁)。
そうとすれば、上告人が本件引渡命令に対し第三者異議の訴を提起することができないとした原審の判断は正当である。所論は、結局、原判決の傍論に対する非難にすぎない。論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(関根小郷 田中二郎 下村三郎 松本正雄 飯村義美)